『 銅 』・ C O P P E R
〔 T 〕銅とは.........
銅は 動物の体内で行われる代謝を作用させる為に非常に重要な 微量元素の一つです。
銅は.........
@ 骨の形成、 A 弾力組織の形成、 B 血液生成と調整、
C 色素の形成、 D 再生力維持、 E 免疫性体系の機能維持
.......には欠かせない成分です。
銅が不足・欠乏しますと これら6つの機能維持に障害・弊害をもたらしますが、ここで注意すべき点は、
動物の種類によってその影響が変わるという事なのです。
例えば、牛や羊は 銅を体内に半年程度備蓄しておけますが、馬は2週間が限度だと言われています。
これは すなわち、牛や羊への銅の与え過ぎは毒性をおびることになりますが、馬の場合においては
集中して与え過ぎない限り「与え過ぎ」にはならず、むしろ少し投与の間隔が開くだけで「不足」状態に
なってしまう訳で、これが 銅の特徴と言えます。
銅は 動物の生理的体系を語る上で非常に重要な以下の2つの酵素を従属させています。
『 リジル酵素 』
『 アミン酸酵素 』
これらの酵素は 触媒として血管の中で働き、上記の6つの銅効果の中でも 特に A の弾力組織には
重要で この弾力組織の形成が競走馬にとって非常に重要な 『 腱 』にも関連してきます。
この様に 銅 というものは銅 のみから得られる効果だけでなく、銅によって馬に必要な他の成分を有効に
させる補助的役割 もあるのです。
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〔 U 〕銅と骨の関係
骨の形成過程において重要な成分に 『 角質(コラーゲン) 』があります。
角質は、タンパク質(プロテイン)が 『 ポリペプチド連鎖 』 によってつながれた1本のプロテインの糸
の様なものが編まれた様に集合したものから出来ており、その1本の糸は下記の図の様に1本1本が
”‖ ”で うまくつながれて出来ています。
---protein---‖---protein---‖---protein---‖---protein---‖
---protein---‖---protein---
銅が不足しますと、この 『 ポリペプチド連鎖 』に必要な
『 リジル酵素 』 と 『 アミン酸酵素 』 も
必要量発生しなくなる為、上図の つなぎ部分、つまり ”‖ ”の部分が弱体化し、プロテイン、すなはち
角質 同士のつながりを失わせ、最終的には角質自体を弱体化させてしまい、これによって骨部の
基礎構築体系に支障をきたす訳です。
尚、上記の 『 ポリペプチド連鎖 』 は、蹄部の角質生成にも関連してくる為、銅不足は蹄部にも影響を
及ぼす.....と言う事が出来ます。 また、ポリペプチド連鎖は アミノ酸の欠乏を防ぐ補助剤的役目も
になう事を忘れてはなりません。
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〔 V 〕銅と色素の関係
銅の欠乏による最初の兆候の1つが 毛色の変質と外皮の艶が失われてくることであると言われていますが、
これは銅が含む、「ポリフェノール酸化酵素(メラニンを生成する酵素)」が必要なだけ存在しなくなるから
であり、例えば 馬の毛を1本 手にとって見た時に、その毛の根元(生え際の部分)と毛先の方の部分の色が
異なったり、メラニンが不足すると見た目にも毛艶が悪くなってきます。
馬体を見た時、体調が悪くない(特に胃腸の調子)にも関わらず、毛艶が悪い場合は 単純に それは
銅不足が
原因であると判断する事も出来るのです。
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〔 W 〕鉄の役割を助ける銅
鉄分は 骨髄で 血球や ヘモグロビンを生成するのに不可欠な成分ですが、鉄は通常、
肝臓や 脾臓で
貯えられており、これらを 骨髄に輸送する為に 『 トランスフェリン( 血しょう糖蛋白質 ) 』 という いわゆる
運搬システムとなり得るものを必要とします。
このシステムが正常に働いてこそ 肝臓や 脾臓にある 鉄が骨髄に運ばれるのです。
また、このシステムを スムーズにさせる為には 『 セルロプラスミン 』 という酵素が必要で、この酵素と
銅の結びつきが非常に強い事から 銅不足というものが、このシステムが働かなくなってしまう原因となり、
結果的には 肝臓や 脾臓の鉄が有効利用されないという理由につながるのです。
分かりやすく言うなら、銅は乗客であり、 『 トランスフェリン』はバス。そして『 セルロプラスミン 』が
そのバスを動かす燃料という事になり、バスが乗客を乗せる事で売り上げを得る、つまり銅が骨髄まで
『 トランスフェリン』に乗って初めて 血球や ヘモグロビンを得ることが出来るようになるのです。
以上の事から考えて、馬が貧血症になったり、血球不足に陥ったりする根本原因は銅不足にあり、また、
いくら飼料などで鉄分を補給してそれが肝臓や 脾臓に蓄積されたとしても体内で銅が不足していれば
その鉄分は 結果的に全く役立たないということになる訳です。
つまりは、銅不足が鉄不足、或いは鉄の有効利用を妨げる為、結果的に D.O.D.との関連性や その
予防というものに直接関係してくる訳です。 これが、別項でも述べている、D.O.D.には フォーランの
コパービット や、コパーマックス が良いとされている理由なのです。
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〔 X 〕銅不足の発生
馬の銅不足は以下の 直接的原因 と 間接的原因 が考えられます。
◆ 不十分な摂取 ( 直接的原因 )
@ やせた土地で生産・育成されている。
A 正しい成分量を含む牧草を与えられていない。
B 食餌の補充不良 ( 必要成分と量が与えられていない )
◆ 他の成分との相互作用 ( 間接的原因 )
【 微量元素の説明文中の 〔 V 〕 競走馬に必要な微量元素 を参照して下さい。 】
@ 牧草の根の質における問題点。
亜鉛や鉄を多く含む土地に生える草を食べるが為に、亜鉛や鉄の摂取量率が上がり、その分
体内にあった銅が消失されてしまいます。
A 体内において 次の成分の摂取量調整が不適合な為、銅が消失する場合。
亜鉛 : 鉄 : カドミウム : モリブデン : 硫黄
与えられている餌に上記の5つの成分の内、どれかが どれか1つでも必要以上含まれている、
つまり、上記の5種の成分のどれかでも過剰摂取することで銅が消失される訳です。
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〔 Y 〕銅に関しての結論
− 銅はどれだけ必要か −
3歳以上の馬は通常 1日に 280mgから 300mg( 2歳までは その半分の量でもよい )の銅を摂取
する必要があります。
前項〔 X 〕の銅不足の発生の中で述べた銅の不足理由に幾つか実例がありましたが、それらを加味
したとしても、おおよそ 70〜90mg の銅が、それまで与えられて来た牧草や配合飼料などから既に
摂取出来ていると仮定する事が出来、不足分として あと200mgの追加が最低必要 になってきます。
また、何よりも 馬が 牛や羊と違って銅を体内で長い間貯蔵しておくことが出来ない種類の動物である
ということから考えると 銅の補充というものは継続的に必要であると言う事が出来ます。
− 銅を与え過ぎるとどうなるか −
「微量元素とは....」の説明の中で 微量元素というものは、安全域から毒性域までに段階があることを
説明しましたが、はたして銅の場合はどうなるのでしょうか?
アイルランドにおいて毎日1,200mgの銅を、受胎している複数の繁殖牝馬たちに120日間継続して
与える実験を3回(3年間)行い、何の毒性も出てくることがなかったと言う結果を出しております。
従って銅は 微量元素の中で最も 「安全域の広い成分」であることがわかった訳です。
− 銅補給のベストの方法 −
毎日200mgの銅を摂取させるベストの方法として、フォーランのコパービットを使う方法があります。
コパービットは シロップになっており、1日1回餌に混ぜて与えるのですが、この1回に与える量が
30ml.で、その30ml.に含まれる銅が 丁度200mg.なのです。
また、毎日与えるのが 何らかの理由により困難である場合や、一時的摂取強化をはかる場合などは
コパーマックスが最も適しております。コパーマックスは 1回で 500mg.の銅を摂取させる
投薬器入りのペーストで、コパービットが毎日与えるのに対してコパーマックスは、1〜2週間に1回で、
毎日与えるコパービットと、最終的に同じ機能を果たします。
− 与えるタイミング −
前述の「 銅と骨の関係 」や 別の項に記した 「 D.O.D. 」などの事を考えても、やはり繁殖牝馬 には
必要量の銅 を与える事からスタートすると言う事が結果的に その繁殖牝馬自体の体調維持や、
離乳するまでの生まれてくる当歳馬の体内の銅不足を防ぐ事になります。
従って、全ての繁殖牝馬に対して受胎した時点から銅補給を考えられることをお勧め致します。
また、例えば 出産予定日から逆算して 2ヶ月を切るような時期まで来ていても決して遅くはありません。
すぐに銅の補給を始めましょう!
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