『 D.O.D.( 発育性骨疾患群 ) 』 について
〔 T 〕 D.O.D.は なぜ起こるか.........
D.O.D.が起こる原因は 大きく別けて次の3つであると言われています。
【 1 】 遺伝的要因 .......................... ほぼ防ぐ事が出来ないと言えます。
【 2 】 栄養的要因 .......................... 以下の5つの原因、つまりは摂取物から来る理由です。
@ 栄養価の高いもの、或いは濃縮飼料の摂取し過ぎ。
例えば プロテインの取り過ぎ。
これは 一般的に競走馬育成に勧められるプロテインの摂取率は14%、つまり10kgの餌に対して
プロテイン分は 1.4kgまでが良いとされているからです。
A 一度に多量の成分を含む餌を与え過ぎ。
例えば 10kgの何かの成分を与える場合、一度に10kg全部を与えると吸収力がダウンするだけ
ではなく生理上よくありません。
B 間違った割合の成分を含む餌の継続摂取。
例えば、「 カルシウム : 燐 」や 「 銅 : 亜鉛 」 などの適合比率の勘違いなど。
C 銅不足
〔 U 〕銅と骨の関係 及び、〔 W 〕D.O.D.との関連性 を参照。
D モリブデンの過剰摂取
〔 V 〕競走馬に必要な微量元素 の中の説明文を参照。
【 3 】 肉体的(物理的)要因....... 以下の2つの原因により発症してしまう場合。
※ 硬い土地(場所)での生活や、冬場に放牧地が凍結して硬くなっているにも関わらず、激しく
走り回ったり、脚元に過度の負担をかけてしまう場合。
※ 脚部より上の体重が重すぎて脚部で耐え切れない程太っている場合。
以上が D.O.D. の起こる理由ですが、生まれてから自分の脚で立ち上がった瞬間から2歳位までの
期間に 起こりうるものと 生まれた時に既に その様な症状を持っている場合があります。
どちらの場合でも 遺伝的理由でない限り、繁殖牝馬をケアすることによって生まれてくる当歳馬の
D.O.D.を未然に防ぐ事が可能 であると言うことが出来ます。
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〔 U 〕 D.O.D.に関する統計
1991年にアイルランドで 計17の競走馬生産牧場の当歳馬の合計248頭に対し、何らかの
骨疾患群があるか調査したところ下記の様な表の結果が出ており、また 同じような調査を
再び以後2年続けたところ ほぼ同じ数値が出ました。
|
調査した頭数 |
症例判明頭数 |
% |
Colts (牡・当歳) |
125 |
87 |
69.6 |
Fillies (牝・当歳) |
123 |
81 |
65.8 |
T o t a l |
248 |
168 |
67.7 |
ご覧のように 248頭の当歳のうち、67.7%という高確率の馬に何らかの骨疾患群があるという事が
お分かりいただけると思います。
この168頭には 当然 生まれた時から疾患を持つ馬も含みますが、最終的に遺伝的要因はでない限り
80%以上が人工的治療で良化、或いは完治されると言えます。
ここでクローズアップされる事は 248頭から問題を持った168頭を引いた残りの80頭が競走馬として
その後 168頭の疾患を持つ馬で完治した馬と比べて高値で売れたか、或いは良い成績を収めたか
というと決してそうとは限りらない と言う事なのです。
言い換えれば、これらの248頭が古馬になった時の獲得賞金の全248頭中のトップ10を見た時、
その上位10頭すべてが 若駒の時に問題のあったこれら168頭に入っていたと言う確率も非常に
高いのです。
ですから、大事なことは.......
※ 繁殖牝馬を より一層ケアする事で 骨疾患を持って生まれてくる数を少しでも減らす事。
※ 生まれてスグから当歳のケアを始める事。
.......なのです。 これらのケアによって上記例でいう168頭の数を減らす事から始まり、
疾患が発生しても競走馬として能力を発揮出来る様に治癒率をアップさせ D.O.D.による競走能力の
喪失率を大幅に下げる方向に向わせる事が必要なのです。
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〔 V 〕 繁殖牝馬のケアによるD.O.D.の予防
繁殖牝馬のケアによって D.O.D.を少しでも未然に防ぐには 当HPで詳しく説明させて戴いている
「銅」( 母体と仔馬の両方に効果 )と
正常な繁殖機能を維持させる 「亜鉛」( 母体に効果 )を
繁殖牝馬に微量元素としての安全域の範囲内で必要量十分に摂取させることが最も良い方法である
と考えます。
母体をケアすることで その母体から生まれてくる当歳の骨部強化も可能であれば それも合わせて
行うことで より一層のD.O.D.の予防になると考えられる訳ですが、アステオ・グライカン という
軟骨組織の形成・成長に非常に有用、有効な、プロテオグリカンを含んだ製品があり、これを
出産予定日の3ヶ月くらい前から繁殖牝馬に与える事で かなりの骨部強化が出来るという実例が
アイルランドで たくさん出ております。 この商品の成分表を見ますと、「銅」と「亜鉛」の比率も
1:3 になっておりますし、「カルシウム」 との比率を考えて配分添加されている
「燐」も適当量
含まれており、当HP内で推奨させて戴いている事 殆どにマッチした成分構成になっております。
つまり、このアステオ・グライカンと〔 Y 〕銅に関しての結論内で説明している、コパービットや
コパーマックスも合わせて使うことで
出産時の、或いは誕生後の当歳のD.O.D.の
発生率をかなり
下げると言う事が出来るのです。
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〔 W 〕 当歳馬のケアによるD.O.D.の予防
D.O.D.が起こる3つの大きな要因を 〔 T 〕 D.O.D.は なぜ起こるかで述べましたが、
その内、
【 2 】 栄養的要因 と 【 3 】 肉体的(物理的)要因 は正しい
ケア方法で ある程度改善出来ます。
※ 栄養的要因に対して.......
離乳までは母馬をケアすることが仔馬のケアになりますので離乳後に正しい成分が
組み合わさった飼料を与え、特にプロテインの調整と
最低必要量の銅(150mg)の
補充を行います。 つまり、微量元素を正しく使う 訳です。
※ 肉体的要因に対して.......
当歳馬の馬体重をコントロールします。
通常、当歳馬が誕生してから しばらく(冬の間)は体重が思うほど増加しません。
ところが春になり母体が自分の体の調子を戻す時期、或いは青草を食べ始める時期に
なってくると当歳馬の体重が急激に増加します。 そして夏場になるとセリ前に
高蛋白の餌を与え始める為、或いは青草を自らどんどん食べるようになる為、さらに
急激に増加します。
これら ほぼ2回の体重急増時期に 脚への負担が強すぎて
何らかのD.O.D.の症状を
発症してしまう可能性が最も高いと考えられます。
つまり、もしここで、当歳馬の体重の増加というものを 脚の発育や脚の骨の固まり具合と
平行して進められないなら、D.O.D.は かなりの高確率で発症してしまう訳ですが、
以下のようなケースで その発症率をかなり下げる事も可能なはずです。
◆ 当歳馬の体重を 最低でも1ヶ月に1回(理想は2週間に2回)計り、
理想の体重になる様、調整する。
* 体重急上昇傾向の時......餌の量を減らし運動量を増やす。
但し、微量元素は減らさない事。
* 体重が上昇しない時......離乳前でも当歳馬の口からビタミン系シロップを
飲ませたりして食欲が落ちない様にする。
◆ 必要以上の高蛋白成分の餌を与えない。
◆ 糞(ボロ)の管理をする。 特に便秘にならない様にする(便秘になると体重増)。
以上の方法でD.O.D.を少しでも減らしましょう。 難しくはない筈です。
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