Bombers Bit は南アフリカにあるボンバーズ社が手作りで製造するハミです。種類が数百以上有り、馬ごとに癖やバランス、嚙み合わせや馬の嗜好などを見てその馬ごとに合ったハミを選択できます。
馬がどのように体を動かし、頭をどのようにしているかを観察します。観察して分かった問題点から使用するハミを選択し、馬の反応とバランスを改善する事が出来ます。
●頭が高すぎる/低すぎる
●頭を振る
●ハミ受けが悪い/取らない
●口を開けたまま
●舌で遊ぶ/絡める
●左右によれる
●まっすぐ走れない
これらの問題点は全て馬の歩幅を縮め、無駄にエネルギーを消費することに繋がります。
ボンバーズが考案する簡単なプロセス、貴方が行う観察に基づいて各馬に最適なハミのパーツの構成を見出し、それによって作り上げられる専用のハミによって馬の口元のバランスキープとハミからの圧力を軽減してハミの受け入れを促し、最適なレースの実行に導きます。
水勒ハミは一般的なタイプのハミとして日本でも多くの馬に使われています。下の左写真は伝統的な水勒ハミで中央ジョイント部が舌の上に下向きに出ている為、オフセットされたときに馬の舌に圧力点が生じ、これだけで舌が敏感な馬には苦痛を感じます。
それに対しボンバーズの水勒は下中央の写真通りオフセットされた中央ジョイント部が下に大きな圧力が生じない様な構造になっています。馬の口の形の様に湾曲した曲線があるため舌のより大きな表面積に分散させ、圧力を和らげます。
また、従来の水勒ハミはサイズに関係なく16~18mmもしくはそれ以上ある太さのハミ身を使っていることが多いです。これでは口の小さなハミ幅の狭い馬には行内での異物感をより強く与えてしまします。
ボンバーズビットは馬ごとの口のサイズに正しくハミが収まるようにハミの太さも調整しています。ハミの一つ一つのパーツが大きすぎると舌だけでなく、頬や上あごにも影響を与えます。口の中での納まり具合を考えて作られている点が他のハミとボンバーズビットとの違いです。
ボンバーズビットは様々な素材から造られていますが、主たるものは4種あります。
・スイートアイアン
メーカー独自の軟鋼ブレンドで酸化するように特殊加工されており、酸化すると馬が好む甘味が生まれ、唾液の分泌を促します。また、馬の体温に合わせて温度が上がる為、金属であることを感じ難くなり口内受容が良くなり、これが唾液と反応して集中力を維持する感覚を生み出します。
尚、チークピースとその接合部分はステンレスなので錆びません。
・ボンバーブルー
メーカー考案のナイロン複合材で、中にステンレススチールの芯を入れる事で強度と安定性を高めています。チュアブルで硬い金属よりこの素材を好む馬も多く存在する為、同じ形状で金属では出せなかった良い結果が出る事が有ります。
・モールデッド・マレン
非毒性、対紫外線性、FDA承認の柔軟な合成素材から出来ています。中心には金属製のケーブルを通しており、安全性を高めています。
チュアブルなので、硬い物や口内受容性の良くない物をお受付けられない馬の為の最終手段で使うハミです。噛む回数で消耗する為、長期使用には向かず表面の劣化具合を見て使用を終了する必要があります。
・チタン
アレルギーを起こしにくい素材なので金属に敏感な馬に使われます。ハミの重量は馬にプレッシャーを与える事もあり軽量な割に強度のあるチタンは舌圧をセーブし、マウスピースの温度も口内にセットしてすぐに体温近くまで上がる為、ソリッドタイプのマウスピースとして強度も口内受容性も高いと言えます。
多くのハミは、左右からの圧と舌への圧と顎の圧を考えて形状を設定していますが、ボンバーズのハミは図のようにプレッシャーがかかる6か所を想定しています。それぞれハミの形状、チークピースの形状と動き、そして材料の持つ特性から①のハミ本体からの圧、②の左右からの締め付けによる圧、③の舌への圧、④の後頭部への圧、⑤の頬への圧、⑥の顎への圧と細かく想定される圧を和らげるためのパーツが選ばれて組み合わせたものを製品にしています。
ボンバーズのハミは、サイズレンジが広く以下のサイズを取り揃えております。
・90 mm ~ 145 mm (5mm刻み)
・35.5 inch ~ 5.7 inch
競走馬用としては110~130mmが一般的ですが、最近の日本の競馬馬はインブリードが原因で年々顔が小さな馬が出てくるように成ってきており、特にサンデーサイレンスつまりはディープインパクト系になると見た目の顔が大きくても顎のサイズは小さい馬が多くなってきています。我々が各所(北海道/天栄/美浦/しがらき/栗東/等)でハミのサイズを測った馬約170頭の内、約78%が120mm以下47%が115mm未満でした。
ハミを装着する際にチークピースがエッグの場合はジャストサイズ、ルーズの場合は5mmの余裕をもっても問題ありません。
以上のサイズレンジに加え、ハミサイズによってハミの太さも変えています。これはサイズの小さな馬への負担を軽減する為であり、今の日本のサイズが小さい馬により合いやすいと言えます。
通常の水勒ハミ、シングルジョイントのハミは①の赤い線が示す通り真っすぐになっています。従って、騎乗者が手綱を強く引いたりビクつかせたり(強弱がランダムに繰り返されたり)すると強い圧が舌や下顎骨の当たる場所にかかり、口内が敏感な馬の性格や奥歯下顎骨の上部の形状によって損傷を与えてしまいます。特に下顎骨の②の部分が間違ったハミの継続使用で損傷したり、痛くない方にばかりハミを取る癖が付いたりします。
水勒ハミは上記の様なケースに当てはまらない馬でその使用サイズに問題無ければ、騎乗者にとって馬とのコンタクトを取る際の操作性に利点があります。また、海外遠征時にほとんどの国で使用可能なので出来るだけ水勒ハミで調教することを目指していると言う事は正当な事です。
ここで数あるボンバーズビットの中で使用率の高いスナッフルリンクを例にあげます。画像の様にこのハミは舌のスペースが作れます。
パーツが湾曲していることでスペースを作り、舌など口の中の部分部分への圧を分散させ負担を軽減させます。実際、数人の方の腕を使って今まで使われてきた銜とこのタイプのハミを腕に乗せてから引っ張った際の圧の感じ方を体験して頂き、如何に腕が感じる圧が違うかを体験して頂きました。
馬は痛みや精神的に圧のかかるような状態から逃げようとします。これにより頭の位置が悪くなったり舌を負担から逃れるために外に出したりして他の弊害を起こしてします確率もあげてしまいます。
以上の事からハミを選択する際にはまず以下の3点を念頭に入れてください。
1. ハミは馬と騎乗者のコンタクトの為の器具で有り、決して動きを強要するためのもの、或いは矯正器具であってはならない。
2. 馬に合う様にハミが存在するにも関わらず、大きすぎるハミでハミが機能していないケースが多いようなので、どのハミを使用するかにもよりますが、遊びの幅は5mm程度まで。
3. 馬がハミでリラックスできている状態で調教が出来ると騎乗者のレベルも向上する。
以上3点をご理解いただき、いろいろなハミを試しつつそのうめのベストのハミを見つけてあげてください。
調教は騎乗者によって行われる教育ですがハミが正しく機能していないと不要な癖が付いたり、首など体の筋肉が左右対称につかなかったりするため、正しいハミに変えたとしても100%正常に動かせるようになるまで時間がかかります。
ハミを変えた際に見られる良い兆候が出たらそのハミを使って最低でも1週間~10日間程度はそのハミで調教を継続し、毎日嫌な形で調教を終了させるのではなく馬にとって気持ち良い形で毎日を終わらせることを継続させると、メンタルや体のバランスが元に戻っていきます。
ハミを正しい物に変えた際に意外と早く表れる調教は例えば次の様な事柄です。
・いつもより唾液を多く出して動いている。
・頭の位置が正常な位置に戻った。
・ハミを受け入れている。
・舌を出さなくなった。
・首を振らなくなった。
逆に左右への張りや左右の方さ違いはすぐに表れないことも有りますが、使っていくうちに解消されてくるはずです。